第35章 ストバスコートで
『…たしか…誠凛の…。』
私は、2人に会釈してボールを拾いに行く。
「お前、こんなとこで何してんだよ、黄瀬。」
火神と呼ばれた、眉が2つに割れた男子が、涼太に話しかけた。
「え?デートっスよ。デート。ほら、あそこにいる、髪の長い人。俺の彼女っ。」
「「 彼女とデート?! 」」
涼太がご機嫌にウインク付きで答えると、誠凛の2人組(主に火神くん)が、激しく動揺して私の方を凝視している。
「お、おまっ!?」
「…黄瀬くん。やっぱり、いけすかないヤツですね。」
「ヒドッ!?」
3人のやり取りが楽しげで、私は自然に笑みを溢した。
「クスッ…。3人とも仲良しなんだね。」
私は姿勢を正して、3人の前に歩みでて、自己紹介した。
「私、海常高校3年の卯月美空です。2人は誠凛の選手だよね。あなたが火神くん。あなたが黒子くんでしょ?」
「はい。あの?」
「私、海常の新聞部でカメラマンしてて、2人のことは知ってるの。
春の練習試合、取材させて貰ってました。」
「あぁ、あの時の。」
「?黒子。お前、知ってんの?」
「はい。2階席で、シャッターを切ってる人がいました。顔までは認識できませんでしたが…。」
誠凛の2人が話しているところに、上機嫌で涼太が2人の間に入って肩を組んだ。
「さすが黒子っちっスね!でも、美空はスゴいんすよ。
校内写真は、殆ど自ら撮って管理してるんス。
他にも、凄いとこいっぱいあって…俺の自慢の彼女っス!」
「…凄いノロケですね、黄瀬くん。
って…重いです、黄瀬くん。」
「…カノジョ……」
「いいじゃないっスか!久しぶりなんスしっ♪」
嫌がっている黒子くんと、何故かボーゼンとしてしまった火神くん、そしてそんな2人から離れない涼太に、私はまた笑ってしまう。