第35章 ストバスコートで
私たちは、公園の中の小さいバスケットコートに来ていた。
デートと言われて、病院から連れ出されて、最初は、渋谷・原宿に行きたいと言った涼太に、私は渋い顔をした。
で、結局、涼太の練習の手伝いをすることになった。
「なんか、こーやって、美空のパス受けるって、不思議な感じっスね。
いつもはコートの外で、美空は写真撮ってるから、なんか変な感じっ。」
「うん。」
私は、いつも使っていた、壊れてしまった一眼レフを思った。
手に馴染んだ、あの重み、あの感触が今はない。
なんとなく、手が寂しくて、持っていたボールをドリブルして、涼太がゴールした反対のゴールにレイアップシュートをした。
ボールはフワッと手を離れ、バックボードに当たって、ゴールネットを通った。
「ナイシュッ、美空!」
涼太が反対のゴール下から、声を掛けてくれる。
すると…
「黄瀬くん?」
「黒子っち?!」
「黄瀬じゃねーか!!」
「火神っち!」
コートの金網の向こうに、知っている2人組が、紙袋を抱えてこっちを見ている。