第33章 コートとファインダーの距離
「なんて顔してんスか、美空。」
涼太の声にハッとして、見上げると、涼太は苦笑していた。
「俺はさ、嫌っス。
…美空が何て言おうと、別れない。
こんな距離なんて、飛び越えるっ。」
「危ないっ!!!!」
涼太が2階席から、飛び降りてコートに着地した。
「バカ!!足怪我してるでしょ?!大丈夫!?」
私は、着地してしゃがみこむ涼太に走り寄って、隣に膝をつく。
「大丈夫っス。」
ニヘラっと笑う涼太に、安堵のため息をつくと、手を握られた。
「美空。俺、いっつも応援してもらってた。
だから俺も、美空を応援するっス。
今回のことも、俺が離れたら解決するなら、離れる。
でも、別れない。
絶対、別れないっス。
……美空は?俺と別れたい?…嫌いになっちゃった?」
真剣な涼太の目が、私を覗き込む。
私は、涼太の首に抱きついた。
「ごめんなさい。涼太。」
「……うん。」
「私、涼太が好き。」
「うん。」
「別れたくない。」
「うん。」
涼太の優しい頷きに、身体の力が抜けていく。
すると、涼太の腕が、私を支えるように抱き寄せて、その場で床に座り、抱き合う格好になった。
「……私、涼太を好きになったら、他の人に迷惑がかかるって知ってた。
…まさか、胡桃ちゃんに怪我させちゃうなんて…。」
「あれは、俺の監督不足。ごめん、俺が女の子達を制御できてれば、こんなことにはならなかったんっス。」
「ううん。私がちゃんと、涼太を好きな人たちに、誠意を見せていれば良かったんだと思う。」
私は涼太の肩口に顔を埋め、考えを巡らす。
すると、涼太は私の顔を上げさせ、視線を絡ませる。
「美空、まだ距離置きたい?」
「……ううん。」
私が首を振ると、涼太は床に大の字で転がった。
「あーーーーー良かった。」
私はそんな涼太に笑う。
すると、涼太はむくれた顔で、すねた。