第32章 報復
[涼太]
あれから、ますます、俺はバスケット浸けの日々にした。
余計なことなんて考えないように、練習に明け暮れる。
笠松センパイ達には、少しは休めと言われたが、今は強さが欲しがった。
がむしゃらに練習して、俺は、体育館の裏にある水飲み場で、頭から水を被る。
練習後の火照ったからだに、水の冷たさが心地いい。
俺は、用意してあったタオルで、頭を拭き、顎に垂れる水をTシャツの襟で拭いた。
体育館を閉める準備を手伝おうと、戻ろうとすると、女子の争う声が聞こえた。
俺は、いつもなら女子の揉め事には、関わらないようにいるけど、つい目が向いて、声がする方を見ると、いつも俺の練習を見に来る女子集団と、胡桃サンが言い争っていた。
「美空センパイに、謝ってください!センパイのカメラを壊すなんて…犯罪です!
」
「はぁ?!何言ってんの?あたしたちがしたって、証拠あんの?しょーこ!」
俺は、胡桃サンが言ったことに衝撃を受けて、頭に血が昇るのを感じる。
『美空のカメラを壊したってっ!?』
歯を食い縛って、俺は彼女達に近づこうとする。
「……美空センパイが、真剣な思いで取材してるの、2・3年生達は知ってます。
でも、知らないのは1年生の人達だけ。
そして、貴女達はいつも黄瀬くんに張り付いてますよね。…ストーカー並みに。
だから、知ってるんですよね。黄瀬くんと美空センパイが付き合ってるのも。
一番大事なカメラを壊せば、センパイが一番悲しむっていうのも!」
胡桃サンは、日頃ふんわりした雰囲気なのに、今は必死に女子達へ訴えていた。