第32章 報復
[美空]
あれからすぐに、中途半端に涼太を突き放した酬いを、受けることになった。
いつものように、早朝、部室に行き、取材用カメラを準備しようと、カメラケースを開けた。
しかし、いつもの一眼レフも望遠レンズも入っていない。
昨日、撮影を終えて、確かに戻したはずだった。
私は、首を傾げて、他のケースを見るが、私のカメラ機材だけがない。
ふいに、部室に入ってきたとき、窓が開いていたのを思い出した。
私は、嫌な予感を感じながら、恐る恐る窓の下を見る。
「おはよう、卯月。今日も早いな。…?おい、卯月?」
広瀬が、私の隣に立ち、同じように、窓の外を見た。
「っ!! お前っ、あれって!!!」
広瀬は、飛び降りかねない勢いで、窓の下を見た。
部品が散らばる、私の一眼レフ。
無惨に砕け散った、レンズの破片も、ここからでも分かった。
私は、広瀬の声で漸く、身体の金縛りが解けて、カメラだったものを拾いにいく。
力の入らない足取りで、中庭に着くと、煉瓦に、散らばった部品やレンズの破片があった。
広範囲に飛び散っていて、手で拾うのは難しそうだ。
私は、しゃがんで、レンズの破片を拾う。
「美空、危ないからやめろ。」
広瀬の手が、私の肩を掴み止めさせようとする。
しかし、私は無言で、何枚か破片を集めた所で、私の一眼レフを見つけた。
レンズを装着させる部分は割れ、中の精密部分も壊れている。
私は、一眼レフを持ち上げ、抱き締めた。
高校入学の時、お父さんから貰った、入学祝だったのに。
涙が溢れて、カメラに落ちる。
私は、壊れた一眼レフを抱き締めて、泣いた。
そんな私を、広瀬は、慰めるように肩を抱いてくれていた。