第22章 涼太の傍へ
[涼太]
ジャージに着替えて、ロッカールームを後にする。
笠松センパイはいない。
先に帰ってろって、言ってたらしい。
悔しい気持ちが、胸を圧迫する。
『…振り返ってちゃダメだ。前に。…一歩でも、前に…。』
俺は、視線をあげて、前へ歩き出した。
体育館を出る。
「え……?美空……ち?」
美空っちが、体育館の出口にいた。
俺に気がついて、顔をあげる。
「…なんで?」
美空っちに聞こえないような声で、呟く。
「え、卯月?お前、確か、野球部の撮影じゃなかったか?甲子園に行ってるはずじゃ…。」
「あ、おい、先に行くぞ。」
「え?ぁ、そっか。じゃ、俺たち先に行くな。」
小堀センパイが美空っちに話しかけるが、他のセンパイが気を利かせて先に帰っていく。