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キンモクセイ【アルスラーン戦記】※不定期更新

第2章 レーゾンデートル


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「はぁ、王族やらなんやらと。色々面倒なんだなぁ…」

幽閉。
今のカナヤにはその言葉が一番似合っている。
ヒルメスの部屋にカンヅメ状態になって、一体どれくらい経ったのか。
こんなナリでも一応女なわけで、てっきり手を出してくるのかと思いきや、全くその素振りもない。
毎夜暖を取るかのように抱きすくめられるばかりなのだった。

「それはそれでくや…いや、断じてそんな事は思わないぞ!」

左右に頭を振って変な考えを振り払う。
そんなことより、この部屋に閉じ込められっぱなしなのをなんとかしたい。
警戒を解いたのか何かはわからないが、以前鎖と首輪を解かれてからはこの部屋を自由に扱って良くなったのは進歩だ。
しかし。

「ヒマ!!ヒマなんだって!ヒマっ!」

日中は見つからぬようにと言いつけられて、窓を開けるのすらかなわない。
かと言って部屋に何かあるわけでもなく、読めぬ文字で綴ってある書物がいくつか有るだけなのだった。
カナヤはバンバンと机を叩いて苛立ちを露わにすると、不意に部屋の扉が開いた。

「おかえりなさいませ主人様~」
「・・・その言い方はやめろ。たとえお前であっても癇に障る」

バタンと扉が閉まって内鍵がかかると、羽織っていたマントと仮面を外して椅子へ放り投げた。

「あれ、仮面直したんだ」
「うむ」

返事が短く、これはなにか思うところがあったんだな、と悟る。
暫くヒルメスと共にいてわかったことがある。
もともとそんなに口数が多い方ではないのだが、何か厄介な問題ごとを抱えると、こうして返事が端的になり且つ目線が合わなくなるのだ。
おまけに今日は輪をかけて雰囲気が黒い。
証拠に、いつもの仏頂面に加えて眉間にシワが寄りまくっている。

「・・・いい男が台無しだよ」

カナヤは身を乗り出し、向かいに座ったヒルメスの眉間に指をグリグリと差し込む。
だいぶ慣れてきたせいか、最近のカナヤは遠慮というものが無くなっているようだった。
その手を掴むと、自身も身を乗り出して顔を寄せる。
対するカナヤはそれに顔色を変えるでもなく、ヒルメスの目を見据えた。

「カナヤ、ここから出たいか?」
「・・・!」

動揺と驚きにその目が見開かれるのをヒルメスは見逃すはずもなかった。
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