第9章 クリスマス・パーティー
「家は関係ねぇ!」
シリウスは吠え、彼もまた杖をセブルスに突きつける。
バチバチと火花が散るような互いの視線。
「セブルス、落ちついてください…!」
そう言ってはみたものの、彼の耳には届きもしないようだった。
(ど、どうしよう…?!)
シリウスの実力がいかほどかはわからないが、セブルスが本気で魔法を使ったら大変なことになるのは目に見えた。
大慌てでスラグホーンを探すが、見つからない。
(原因のMs.エバンズもいないし、このままじゃ――)
周りのパーティー参加者も自分たちのおしゃべりに夢中で二人が至近距離で杖を向け合っていることに気づかない。
どうすればいいのか、と視線を足元に向けると。
(あ…)
そこにはクリスマスツリーの丸いオーナメントが一つ転がっていた。
どうやら落ちてしまったらしい。
(…よし)
ピンポン玉よりも小さいそれをキラは素早く拾い上げ、拡大呪文をかけた。
ドッヂボールほどの大きさになったそれを、キラは二人目掛けて――。
「えぃっ!!」
投げた。
肥大したオーナメントは狙い違わず丁度二人の間へと飛んでいく。
「「っ?!」」
互いに突きつけあっていた杖に命中し、二人の手から杖がカランカランと音を立てて零れ落ちた。
突然のことに二人は言葉を失うが、すぐにオーナメントが飛んできた方向に目をやる。
「ここで決闘でも始めるおつもりですか」
自分たちからすれば随分歳下の女の子が腕組みをして仁王立ちしていた。
「「いや…」」
罰が悪そうに二人は視線を彷徨わせる。
「女性を取り合うことは悪いとは言いません。むしろドラマみたいで憧れますが、こんな公の場で感情を剥き出しにしてはどちらも嫌われてしまいますよ」
「「…は…?」」
キラの言葉に二人とも目が点になる。
当たっているわけではないが遠くもない気もするがしかし。
「…先に帰る」
「え? ちょ、セブルス、待ってください…!」
「お、おい…」
大きなため息をついてセブルスは踵を返し歩き始め、それをキラが追う。
条件反射で伸ばした手も虚しく、シリウスはその場に一人置いていかれた。
「あいつ…どっかで…?」
目的の失せた手をこめかみに当ててシリウスは女子生徒の後姿を見つめるのだった。