第9章 クリスマス・パーティー
「…っ…」
ここで魔法を使えばどうなるか。
スラグホーン主催のパーティーで何か問題でも起こせば、彼の顔に泥を塗ることになる。
彼はそれを許さないだろう。
生徒しかいない定期食事会とは参加者が違うのだ。
ましてや彼はスリザリンの寮監。
セブルスにどんな罰を言い渡すことだろうか。
行き場を失った怒りに杖を握る手がぶるぶると震える。
(セブルス…)
キラはハラハラと彼らを見ていることしかできない。
セブルスとシリウスとリリー。
一体どういう関係なのか。
(もしかして…三角関係?!)
「そういやこのパーティーはパートナー同伴が前提だったな。よくお前なんかの誘いを受けたもんだぜ」
シリウスは目を細めておかしそうに言う。
「それともあれか。臆病なスニベリーは女に声さえかけられず、一人ぼっちってやつか」
ああ、きっとそうに違いない。
シリウスは一人頷く。
「こんなところまでご苦労なことで。だが、しつこい男は嫌われる…いや、もう嫌われてるか」
魔法での反撃ができないとわかっていて、シリウスは楽しそうに確実にセブルスの心をえぐってくる。
「大体、お前がクリスマスパーティーって。似合わねぇ格好して…タキシードも気の毒だろうな。そのループタイも安物だ…いや、お前にはそれが合うか」
「え…」
最後の一言にキラは目を見開き、セブルスは思わず首元の石に触れた。
(そ、そりゃあいいとこのお坊ちゃまからしたら安物でしょうよ…!)
ハロウィンのときのようにその横っ面を引っぱたいてやろうか、とキラが二人の間に割って入ろうとする。
「安物で何が悪い。学生には相応のものだ。俺から言わせればお前のつけている指輪こそ分不相応だ。自分がその指輪に似合うだけの人間だとでも思っているのか。滑稽な…これだからお坊ちゃまは困る」
キラを遮るようにセブルスは苛立った気持ちをシリウスにぶつけた。
「何だと!」
「身分をわきまえるべきだ、と。シリウス・ブラックは家を嫌っている割にはその恩恵を随分受けているようだな。ふん、これでは行く末が知れる」
彼の神経を逆なでするようにフルネームをしっかりと強調すれば、思惑通りその頬にさっと朱色が走った。