第9章 クリスマス・パーティー
「一年生かしら?」
「は、はい」
「私はリリー・エバンズ。グリフィンドールの6年生よ」
差し出された白い手を握るととても温かく、その人柄がにじみ出ているようだった。
「あ、私はスリザリンのキラ・ミズキです」
スリザリン、と言った途端にほんの少し彼女の表情が曇ったのでキラは肩を落とした。
「スリザリンには入りましたが…ほぼマグルですよ。ここでは外国人、ですし」
キラの言葉にリリーは気を許したようだった。
「そう…出身はどこなの? アジア系…よね」
「日本です。中国の隣にある島国です」
「ずいぶん遠いところから来ているのね。貴女の国に魔法学校はないの?」
毛色の違うキラに興味を持ったのかリリーは次々と質問を投げかけてくる。
「ではおばあ様がホグワーツ出身なのね。その眼はおばあ様譲り?」
その問いかけにこくりと頷けばリリーは「私と一緒ね」と微笑んだ。
ぱっと花が咲いたような笑顔にキラが見惚れていると、誰かがリリーを呼ぶ声が聞こえた。
緩やかなウェーブの赤毛はハーフアップにして、鮮やかなオレンジ色のドレスを着ているリリーは、とても美しかった。
ようやく、セブルスは誰かと話している最中の彼女を見つけた。
思わず一歩踏み出してからハッとして視線をさまよわせた。
彼女に会ったとて、受け入れられるはずもないのだ。
グリフィンドールの塔の前でひたすら彼女を待ち、なんとか声をかけたときのことが思い出された。
(…それでも……)
セブルスは深く息を吸い込んでから、リリーに向かって歩いていく。
「リリー」
呼びかけに応えて彼女は振り返った。
しかし、それがセブルスだとわかると体を強張らせて即座にそっぽを向く。
「セブルス!」
代わりに声を上げたのはキラだった。
予想もしなかったことに、リリーもセブルスもキラを見た。
「お知り合いですか?」
キラはそんな二人に少し驚いたようにそう言った。
(セブルスはグリフィンドール嫌いなのに)
「あ、あぁ」
「いいえ。全く知らないわ」
歯切れの悪いセブルスの言葉をかき消すようにリリーは否定する。