第9章 クリスマス・パーティー
歳は少し離れているが、スリザリンでは幼い頃から婚約者がいることも多いためにこのような上級生と下級生の取り合わせも少なくない。
しかしながら、よく知っていると自負するセシリー・ブルームの孫であるキラにはそのような相手はいなかったはずである。
それにセブルス・スネイプという生徒が女子生徒と共にいるということ自体が考えられなかった。
「ハロウィンの少し前から…Mr.スネイプと、Mr.ベルビィに魔法薬学や他の教科の勉強を見てもらっています」
「ほっほぅ!ダモクレスか! なるほどなるほど。確かに二人とも極めて優秀な生徒だ。我がスリザリンでも一、二を争う成績である。良い先輩を持ったな」
祖母と同じように目尻に皺を作って笑いかけてくるスラグホーンにキラは会釈を返し、セブルスを見上げた。
寮監に褒められて悪い気はしないだろうに、その顔はにこりともしないのだが、スラグホーンは気にも留めずに喋り続ける。
「セブルス、君は素晴らしい後輩を持ったと言える。彼女はきっと優秀な魔法使いになるに違いない。人と人との繋がりは時に宝となり、時に自らの命をも救う…。君が今夜このパーティーに来たことで変わる運命というものもあるだろう。人脈というものは実に有益なものだ…ぜひとも楽しんでいってくれたまえ」
大きいお腹を一撫でして、スラグホーンは次にやってきた生徒に声をかけるべく立ち去った。
二人はそんなスラグホーンに少々辟易しながら、会場奥へと進んでいく。
無人のピアノがクリスマスソングを奏で、ハンドベルが独りでに鳴る。
シャンデリアの薄黄色の光と蝋燭の暖かな火がツリーに飾られたオーナメントを照らしている。
想像していたよりもずっと厳かな雰囲気のクリスマス・パーティーで、キラはきょろきょろと周囲を見回した。
(なんか…すごく大人っぽい…!)
それもそのはずで、招待されているのは高学年や卒業生ばかりなのだ。
少ないと言っていたわりにはそれなりの人の数だとキラは感じた。
セブルスはというと、リリーの姿がないかと注意深く出席者を監視していた。