第9章 クリスマス・パーティー
「――あの誕生日プレゼントはっ」
「…行くぞ」
大きく目を見開くキラからふっと視線を外しセブルスは背中を向けて歩き出す。
「え!? ちょ、ちょっと待ってください…!」
セブルスが贈ってくれたものなのか?
だとしたらどうして誕生日を知っていたのか?
確かめたいと思ったが背の高い彼は歩幅も広くて、慣れないヒールのキラとの距離があっという間に開いていく。
地下通路をキラは石畳みにヒールを取られそうになるため両手をパタパタと動かしてバランスを取りつつ小走りで着いて行った。
(ぜ、全然エスコートしてくれない…!)
今日の彼の出で立ちを見てすぐの一瞬、ほんの少し、王子様っぽくて格好良いかも、と思った自分が悲しい。
やっとのことで隣に追いついたところで、セブルスが軽く肘を曲げて右腕を差し出してくる。
「…ん?」
何なのだろうと彼を見上げれば、その顔は酷く険しかった。
「こ、怖いですその顔…!」
「…早くしろ」
「え……あっ、すみません」
腕を組んで歩く他の生徒の姿を見て、キラはその意図を理解する。
恐る恐るといった様子でキラはセブルスの腕と脇のわずかな隙間に手を滑り込ませ、他の女子生徒と同じくパートナーよりも半歩下がり気味について歩いた。
スラグホーンは会場へ入ってすぐのところに立っていた。
生徒一人一人に声をかけているのだが、すでにお酒が入っているのか大層上機嫌のようで頬もわずかに赤らんでいる。
セイウチのような髭を撫で付けながらにこにこしていた彼の視線がキラとセブルスに止まる。
「おお、セブルス! 君が来てくれるとは思ってもいなかった。しかもMs.ミズキがパートナーとは!!」
随分興奮した様子でスラグホーンはセブルスの肩をバシバシ叩くのでセブルスはしかめっ面で彼を見下ろしたが、全く動じていないようだった。
「君たちの間に交流があったとは。一体いつからの……パートナーかね?」
セブルスとキラの関係が掴めず、スラグホーンは少し躊躇って"パートナー"と口にした。