第8章 スラグクラブ
「わ!」
びくりと肩を震わせてその扉を凝視する。
(クリスマスリース…?)
扉には柊や松ぼっくりで飾られたクリスマス感溢れるリースがかかっていた。
キラは恐る恐る、金ピカのドアノブに手を掛けた。
キィ、と古い木製の扉が軋む音とともにキラはその扉の向こうへと足を踏み入れる。
「わぁ…!」
そこはこじんまりとした小さな部屋だったが、クリスマス一色に飾り付けられていた。
キラの背丈ほどのクリスマスツリーの下には大量のプレゼントボックスが並んでいる。
ぐるりと部屋を見渡せば、テーブルの上にも、ソファの上にも大小さまざまなプレゼントがところ狭しと置いてある。
(は、はいっちゃっていいのかな…)
二歩、三歩と踏み込めば、カチャリと後ろで音がして、扉が閉まった。
キラは一番手近にあるプレゼントボックスにそっと手を伸ばす。
(見るだけなら…いいかな…?)
包装はされておらず、箱の蓋にリボンが貼り付けられているものだったのでキラはそろりと蓋を開けた。
「あれ…? これ…」
そこに入っていたのは、自らが誕生日にもらったものとそっくりなガラスペン。
(そういえば…結局ほとんど使ってないなぁ…)
キャリーから使い方を教わったものの、慣れないため箱の中に戻してそのままベッドサイドに置きっぱなしになっていた。
(誰からのかわかんないままだし…)
そっと蓋を元に戻し、キラは違う箱の蓋を開けてみる。
今度は本が入っていた。
「『青い花、それはウルフズベーン』…えぇっと…トリカブト、かな?」
パラパラと中を見てみると、トリカブトの栽培や毒性について記述されているようであった。
再び違う箱に手を伸ばす。
中にはループタイが入っていた。
「綺麗…」
深い緑色をした天然石のようだった。
手に取って光にかざすと、閉じ込められた気泡が透けて見えた。
そうしていくつかの箱を開けて中を確かめる内に、女の子向けのものが何一つ出てこないことに気づいた。
「男の子向け…っていうか、男の人向けのプレゼントばっかりだ…」
おかげで、セブルスとダモクレスに渡すものが決まりそうだった。