第8章 スラグクラブ
「あんまり派手で悪目立ちするのは嫌だってことでしょ」
「は、はぁ…」
「セブルスと一緒に行くのに、ショッキングピンクとか選ぶ気ある?」
その言葉にキラは一瞬その様子を想像してみた。
「…まぁ…一秒たりとも横に並んで歩いてはくれなさそうですね」
祖母セシリーがドレスを送ってくれると先日届いた手紙に書いてあったので、どんな色のものが届くかはわからない。
(ピンクじゃない…と思うけど)
「ま、何はともあれ、パートナーゲットだねー」
良かったね、と頭をぽんぽんされてようやくセブルスがクリスマスパーティーへの出席を承諾してくれたことに気づく。
「セブルス…! ありがとうございます!!」
キラのやったぁ!!と手放しで喜ぶ姿に、セブルスとダモクレスは一時の間顔を見合わせる。
(そんなに良いものじゃないんだけどねー)
(これに懲りたら来年は行きたいなどと言わないだろう…)
「ところで…プレゼント交換はありますか?」
「いや、ない」
「んや、ないねー」
"ない"の部分がちょうど重なって、キラの耳には強調されるように聞こえた。
「そう、ですか…」
(残念だけど…プレゼントに悩まなくて済むかな)
そこではっと気づいた。
目の前の二人へのクリスマスプレゼントをすっかり忘れていたことに。
「わ、私…! 用事を思い出しました!」
「へ?」
「今日はこれで失礼します! セブルス、本当にありがとうございます。よろしくお願いしますね!! では!」
大慌てでペコりと頭を下げて走り去るキラに二人は呆気に取られた。
「あ、あぁ…」
返事をしたものの、受け取り手のいないセブルスの声だけがその場に残った。
「…どうしたんだろーね、突然」
「さぁ…」
(どうしよう、どうしよう?! 何も考えてなかった!)
キラはホグワーツ城の中を早足で駆け抜ける。
何度か同じ場所を右往左往とうろうろしたところで、突如として目の前に緑と赤のツートンカラーの扉が出現した。