第8章 スラグクラブ
(そろそろ戻らなくちゃ…誰か帰ってきても困るし)
キラはプレゼントを全てもとの場所に戻して、扉の前に立って部屋を振り返る。
「ありがとうございました…えっと、勝手に入ってすみませんでした…」
キラは深々とお辞儀をしてから、クリスマスプレゼントの部屋から出る。
バタン、と扉が閉まったと思ったら、その扉は溶けるように消えてしまった。
「あっ――」
思わずドアノブを握ろうしたが、キラの手は空を掴んだ。
「うそ…」
跡形もなくなってしまった、扉があったであろう場所をキラは手で触れてみた。
しかし、見た目と同じくひんやりとした石壁である。
ペタペタとあちこち触り、どんどんと拳で叩いてみても、何も起きない。
忍者のからくり屋敷のようにどんでん返しになっているのかも、という期待もあっけなく外れた。
「…魔法って、やっぱり何でもあり…みたい」
キラは今しがた起こった出来事を早く誰かに話したくて駆け出した。
キャリーとアニーはどんな反応をするだろうか。
それに、セブルスとダモクレスへのプレゼントも準備もしなくては。
クリスマスパーティーまで、あと三週間が待ち遠しかった。