第8章 スラグクラブ
「今年は帰る人が多いから誘った、ってスラグホーン教授はおっしゃってました」
キラがそう言うので、二人は顔を見合わせる。
「…人数合わせ?」
「どうだか」
興味ない、とばかりにセブルスが首を振るのでキラは慌てた。
「お、お二人もパーティーに招待されてるんですよね?!」
「まぁね。でも俺は行かないよー」
あっさりした口調にキラは、えっと驚愕する。
「パートナー探すの面倒だし。クリスマスくらい自分の好きに過ごしたいじゃない?」
「…お前はいつも好きにしてるだろ」
セブルスのつっこみにダモクレスはそうだっけ?と笑うが、キラにはそんな冗談笑えない。
ダモクレスが行かないとすれば、セブルスはもっと行きそうにない。
(どうしよう…)
眉を八の字にしてキラは招待状に目を落とした。
「もしかして、パートナー見つかってないの?」
キラがこくりと頷くのを見て、ダモクレスはきょとんとする。
「なんだぁ、そしたらセブルスにお願いしたらいいんじゃない?」
「えっ」
なんという好都合か。
キラは期待を込めてセブルスを見る。
(な、なんていう顔…!)
まさに苦虫を噛み潰したような表情のセブルス。
対して、ダモクレスはニコニコ楽しそうに微笑んでいる。
「クリスマスはいつも欠席だけどさ、たまにはいいんじゃないかなー」
「何を馬鹿なことを…」
渋るセブルスに、一人ぼっちのクリスマスは嫌だとキラは頭を下げた。
「お願いします。私と一緒にパーティーに行ってください!」
セブルスは腕組みをして、右手で顎に触れた。
(……自分のためじゃない…コイツのために行くのなら…)
リリーに会うことが、許されるだろうか。
「どうしても駄目ですか…?」
懇願するエメラルドグリーンの瞳に彼女が重なった。
「――お前、ドレスは持っているのか?」
「へ…」
「馬鹿丸出しの色なんて着てくるなよ」
「……馬鹿、丸出しの色…?」
一体それはどんな色なのか。
ポカンと口を開けるキラに、ダモクレスがクスクスおかしそうに笑いながら言った。