第8章 スラグクラブ
「リーマス。あなた、家には帰らないって言ってたわよね?」
「うん、そうだね」
「ジェームズの代わりに一緒にパーティーに行ってくれないかしら?」
「えっ、僕が?」
いきなりのことにリーマスは驚いたが、すぐに冷静になって首を振った。
「僕はそういうパーティーはちょっと…シリウスが行きなよ」
「はぁ?! 何でオレが――」
「リリーの誘いを断るっていうのかい、シリウス!」
最初に断ったのリーマスだろ!という抗議は無視され、ジェームズはシリウスをじと目で見つめてくる。
「そ、そんな目で見たって無駄だからな!」
「へぇ。シリウスはリリーを一人で、パートナー同伴のパーティーに行かせるんだ。ふぅん…冷たいんだなぁ」
「お、オレには関係ねぇ!」
抵抗むなしく、その日の二時限目が始まるころにはシリウスのクリスマスイヴの予定は決定されたのだった。
その夜。
スラグホーンの招待状を手に、セブルスは考え事をしていた。
異性のパートナー同伴となっているパーティーにはこれまで出席したことがなかった。
誘う相手がいない、というよりは、誰かと一緒にパーティーを楽しもうという気に一切ならないからである。
しかし、今回ばかりは少し気になる。
徹底して避けられている彼女はおそらく、パーティーに出席すると思われるからだ。
(パートナー…)
リリーがパートナーとして誘うのは十中八九ジェームズ・ポッターだろう。
セブルスはジェームズのことが大嫌いであった。
憎んでいると言っても過言ではないほどに。
そんな男のいるパーティーにわざわざ行くなんて、馬鹿らしい。
だが、いまやスラグクラブだけがリリーとセブルスの共通点であり、今学期は通常開催される食事会がなかった。
この機会を逃すと、次はいつリリーの姿を見て、その声を聞くことができるだろうか。
(どちらにせよ…パートナーを探すのは無理か)
一人で出席すること自体は別に問題ではなかったが、あのポッターに何と言われるか。
そこにシリウス・ブラックが入ってくればどうなるか。
そう考えると、一人で出席することは躊躇われた。
(…くそっ…)
心の中で悪態をつきながら、セブルスは読みかけの本に招待状をしおり代わりに挟み込んだ。