第8章 スラグクラブ
同日、ほぼ同時刻。
燃えるような赤い髪、きらきら輝く理知的なエメラルドグリーンの瞳を持つ少女の手元にも、同じ招待状は届いていた。
封を開けるまでもない。
「――またスラグホーン教授からだわ。きっとクリスマス・パーティーのお誘いね」
「リリー、本当にホグワーツに残るのかい? 僕の家族は君を歓迎するに決まってる! 僕の家に一緒に行こうよ」
「ごめんなさい、ジェームズ。私たち、まだそこまで深い仲じゃないと思うの。だから…来年また誘ってくれるかしら」
眼鏡をかけた少しぼさっとした髪型の男子生徒の手にそっと自分の手を重ねて、リリーは可愛らしく小首をかしげた。
「もちろんだよ! 来年は、絶対に、だよ!」
「ありがとう、楽しみにしてるわ」
嬉しそうにぎゅっと手を握り返すジェームズにリリーも微笑む。
「あーはいはい、そこまで。見てるこっちが暑苦しいぜ。で、結局ジェームズはクリスマス帰るのか?」
シリウスは鬱陶しそうに両手の平を掲げてお手上げのポーズをした。
「うん…本当は残りたいんだけど、今年は帰って来いって言われてるんだ。去年も一昨年も帰らなかったから、さすがに今年はね」
リリーと離れたくないよ、と肩を竦めるジェームズにシリウスはあからさまに嫌そうな顔をする。
そんな三人をニコニコと見ているのは、鳶色の髪をした柔和な顔立ちのリーマスと、くしゃくしゃな茶色の髪を持つ少し歯の突き出した容姿のピーターであった。
「…どうしようかしら」
「どうしたんだい?」
小さくため息を吐くリリーの顔をジェームズは心配そうに覗きこむ。
「クリスマス・パーティーはいつもパートナー同伴なのよ。今までは適当に誰かを誘ってたんだけど…」
自分をじっと見つめてくる彼からすっと目を反らす。
(誰かを誘ったら、ジェームズはものすごく嫉妬しそうだわ。それに…誘いを受けてくれるかどうかが問題ね)
グリフィンドールでは、というよりはホグワーツ内で、もう二人は公認の仲であり、ジェームズの嫉妬が激しいというのも周知の事実となっていた。
スラグホーンからの招待状を毎度読みもせずにくしゃくしゃにして捨ててしまうのでシリウスを誘っても来てくれる気がしない。
となるとリーマスとピーターという選択肢しかないだろう。