第8章 スラグクラブ
「お帰りなさい、キラ。ずいぶんご機嫌ね?」
部屋に戻れば、開口一番にキャリーがにっこり笑ってそう言った。
どうやら顔に出ていたしい。
「スラグホーン教授に、クリスマスパーティーに誘われたの」
クリスマスパーティーなんて初めてだからすごく楽しみで、と心を躍らせるキラの様子に、キャリーとアニーはほっと胸を撫で下ろした。
「良かったわね! 私たち、あなたをクリスマスに一人ぼっちにしてしまうのがとても辛かったけれど、これで一安心だわ」
「クリスマスパーティー…どんな人が来るのかな…?」
「うーん…全然わかんないけど…すぐに招待状を送ってくれるって」
「招待状には日時と場所とドレスコードくらいしか書かれてないと思うわ」
キャリーの言う通りであろうことはキラにも分かっていたが、プレゼント交換有り、と書いてあったりはするかもしれない。
いや、もしかしたらするのが当たり前だから書いてさえなかったらどうしよう。
招待状を受け取ったらすぐに読んで、わからないことがあればスラグホーンに確認を取る必要がありそうだ。
それから数日、キラは招待状を心待ちにしていた。
そしてある朝、ついに梟がキラの元へ飛んできた。
キラは梟へのお礼もそこそこに、食い入るように招待状を見つめた。
「クリスマスイヴの日、午後7時から……え?」
「どうしたの、キラ」
招待状を手に固まってしまったキラに、キャリーがどうしたのかと手元を覗き込んだ。
「あら」
そこには、スラグ・クラブのクリスマスパーティー、日付は12月24日、時刻は午後7時とある。
しかし問題はその下であった。
「ドレス着用、それから…異性のパートナー同伴ね。ありがちだわ」
「ど、ど、ど、どうしよう?!」
大体、ほとんどの寮生が帰ると言っていたのではないか。
男友達もゼロではないが、パーティーに誘うほど仲が良いわけではないし、一年生でホグワーツに残る生徒はほとんどいないのだ。
うーん…とキャリーは右手人差し指を唇に当てる。
「――あなたの先生は残らないの?」
「え?」
キラの頭に浮かんだのは、クリスマス・パーティーには縁遠そうな彼であった。