第1章 9と3/4番線
「ねぇ、キラはどこの寮に入りたいの?」
「レイブンクローかなぁ」
おばあちゃんがレイブンクロー出身で、とキラは答えた。
「そう。私とアニーはやっぱりスリザリンね。家族皆スリザリンなのよ」
「でも…あたし、自信なくて…あたしだけスリザリンに入れなかったらどうしよう…」
アニーは泣きそうな顔をしてスカートをぎゅっと握り締めた。
「きっと大丈夫よ。兄弟は大体同じ寮に行くってお父様もお母様も言ってたわ」
そう言ってアニーを励ますキャリーだが、どうやら彼女自身も実は心配で、両親に相談したようだった。
二人の様子に「どこの寮に行っても大丈夫よ」という祖母の言葉に不安になる。
(どこに行っても大丈夫、だったらここまで二人とも悩まないよね…)
どうなるんだろう、と思いながら、キラは気になっていることを聞くことにした。
「ねぇ。どうして私のおばあちゃん、そんなに有名なの?」
「本当に何も知らないのね」
キャリーは大げさに肩をすくめ、私の知ってる範囲だけど、と前置きして説明し始めた。
ブルーム家というのは、古くからある魔法一族で、特に薬や杖の材料となる草や花、樹木の栽培を家業としている。
ブルームブランドのものは高品質、最高級品だとされ高値で取引きされたのだという。
生産量が少なかったのもその理由のひとつで、一握りの者しか求めることができなかった。
しかし、セシリーが異国へ嫁いだことで状況が一変した。
彼女が嫁いだ先は、日本の園芸農家であった。
優秀な研究者でもあった彼女はそこでさらに研究を重ね、これまでの生産量を数倍にすることに成功、高すぎた売値を下げることが出来た。
彼女には経営者としての腕もあり、ブルームブランドはさらに広く名を知られるようになったのだという。
「あなたのおばあ様は本もいくつかお書きになってるのよ」
わたし、読んでみたけど難しかったわ…とアニーが言った。
「まだ私たちには早いんじゃなくて?」
キャリーの言葉にアニーは曖昧に頷く。
「うん…。でもグラエムが読んでおいた方がいいって」
「まぁ。本当にあなたのお兄様はそつがないというか、なんというか…」
「どういうこと?」