第1章 9と3/4番線
「グラエムは最初からあなたと…いえ、ブルーム家とお近づきになるつもりだった、ってことよ」
人の良さそうな顔してるけど、あの人にはあんまり気を許しちゃダメよ…アニーの目の前で言うのはなんだけど、とキャリーは続けて言った。
「わたしたちの家では、顔が広いことはとても重要なの…」
小さな声でアニーが付け加えた。
「そうなんだ…」
貴族というものはどうも大変らしい。
その後やってきたお菓子売りのワゴンにキラたちは心を奪われ、百味ビーンズをおっかなびっくり口に運びながら、他愛ない話をして過ごした。
しばらくしてイザドラが戻ってきたが、制服に着替えるようにと指示をしてまた他のコンパートメントへ行ってしまった。
監督生という立場だそうで、彼女たちは新入生の面倒を見なくてはいけないようだった。
「見えてきたわ」
「あれが、学校…? お城みたい」
汽車の窓から見えたホグワーツ魔術学校は、とてつもない迫力でキラを圧倒した。
どんよりとした重たい雲がかかる巨大な城は周囲をぐるりと水辺で囲まれている。
キラはぞわぞわと鳥肌が立っていくのを感じて両腕を抱いた。