第7章 あえかな君
「キラ、あなたはそのままでいいのよ」
「ありがとう、キラ」
穏やかに微笑む二人は、まさしく貴族の娘だった。
(スリザリンって…哀しいのね)
二人が眩しく見えてキラは一瞬目を伏せるも、すぐに微笑み返した。
「さぁ、行きましょう。授業に遅れるわ」
いつの間にかダモクレスはいなくなっていた。
大広間の人の数も減っており、授業開始が近いことを示している。
今日は変身術の授業から始まる。
キラたちは慌てて大広間を後にした。
翌週日曜日。
キラは温室に行こうかどうか迷っていた。
ハロウィンの翌日からダモクレスには会っていないし、セブルスはというとその日の夜から姿を見ることはなかった。
なんとなく気まずい。
自身が植えたバラは平日も様子を見に行っているので、今日一日行かずとも問題はないだろう。
(…図書室に行こうかな)
キラはスリザリン寮を出て、大広間横の階段へと向かった。
大広間を通り過ぎようとしたときだった。
セブルスが大広間の地下へと続く階段を足早に降りていくのが見えた。
(この下って…何があるんだろう?)
スリザリンの地下寮ではないことは確かだ。
キラは気になって後を追う。
しかし、セブルスは足が速いのであっという間に見えなくなってしまう。
それでもそのまま石畳みの階段を降りきろうと歩を進めた。
最後の一段――そう思ったときだった。
「誰だ!」
「うわっ!!」
鋭い声と、眼前に突きつけられた杖にキラは心臓が口から飛び出そうなほどに驚いた。
「…ここで何をしている」
眉間に皺を寄せたセブルスは杖を構えたまま、キラに問うた。
「…セブルスがいたので、思わずついて来てしまいました」
「お前は俺がいたらどこへでもついて来るのか」
杖を下ろしながらセブルスは呆れたように言う。
「そういう訳ではないですが…ここは…?」
ちょうど大広間の真下にあたる場所。
大きな扉がセブルスの後ろに構えていた。