第6章 ハロウィンの夜に
「さむ…」
ふるり、とキラが体を震わせた。
他の寮と違ってスリザリン寮は地下にある。
石畳みがひんやりとした空気を生み出していた。
セブルスは自分の羽織っていたローブを脱いで、キラに被せた。
「ありがとうございます」
キラの体が隠れたことで、セブルスはほっと息をついた。
なぜかわからないが、気になってしまっていたのだ。
「セブルスは寒くないんですか?」
「…平気だ」
本当だった。
しかし、キラはそう思わなかったらしい。
「こうすれば寒くないですよね」
ふふ、とにっこり笑ってキラは大きなローブを広げて片側をセブルスの肩にかけ、反対側を自分の肩にもかけた。
『なんか、懐かしいなぁ…』
「ん? 何と言った?」
不意に零れた言葉を、セブルスが拾う。
「懐かしい、と言いました。…小さい頃、隣に住んでる年上の男の子とよく一緒に遊んでたんです。日本では、年上の男の人を"Oniichan"と呼ぶことが多いんですけど、そのお兄ちゃんとこんな風に毛布に包まって本を読んだりしたなぁ、って思って」
「オニイチャン…」
「はい。私にとってセブルスもダモクレスも…とても素敵なお兄ちゃんです」
「…そうか」
(ならばお前は妹…か。…悪くないな)
その関係性が妙にしっくりとしてセブルスは薄く笑った。
二人はしばらく会話のないまま座っていたが、キラが口を開いた。
「…あの、セブルス…本当に寒くないですか?」
「うん?」
「なんか…すごく寒い、です…」
見れば、キラの腕は鳥肌が立っていた。
はーっ、とキラが自分の両手に息を吹き掛け始めたので、その手を取ってみれば酷く冷えていた。
「どうしたんだろ…」
体の異変に、キラは不安そうにセブルスを見る。
セブルスはキラの頬のヒゲが少しずつ短くなっていくことに気づいた。
(副作用か…?)