第6章 ハロウィンの夜に
バタバタと走ってきた二人はようやくスリザリン寮に着く。
合言葉で中に入り、誰もいない談話室に入った。
いつもは上級生が陣取っている暖炉前のカウチに並んで座ると、キラは脱力した。
「はぁ…びっくりした…」
「それはこっちのセリフだ…というより、お前…キラか?」
今の彼女は自分と同い年くらいに見えた。
「そう…そうなんですよ!」
かくかくしかじか。
キラはセブルスに事の顛末を話して聞かせた。
「それは…老け薬だろうな」
セブルスは渋い顔をして言った。
「老け薬…??」
聞くと、飲めば年を取る薬だという。
本来なら一滴飲めば一歳分なのだが、今回の薬は猫ヒゲも生えた上で、小瓶の中身全て飲み干してこの状態。
ダモクレスがどうやってこの薬を作ったのかわからないため、元に戻るには効き目が切れるまで待つしかなかった。
「仮装した状態を知らなかったら、お前だとわからなかったな…」
「セブルスが通りかかってくれて助かりました。ありがとうございます」
「なぜあんなヤツと一緒だったんだ?」
「知りませんよ…。トイレから出てきたところで捕まったんです。あの人有名なんですか? 私が名前知らないって言ったら驚いてましたけど」
それを聞いて、セブルスはただでさえ険しい顔をさらに険しくする。
「ヘンリンソンにでも聞いてみろ」
「お知り合いで――」
「まさか」
あまりに喰い気味にセブルスが言うので、キラは面食らった。
仲が良いようにはどうやっても見えなかったので、キラはそのことについて言及することはやめた。
「それで…何もされてないな?」
「えぇ、ギリギリ」
隣に座るキラがはぁ、とため息をつく。
艶やかな黒髪は伸び、化粧を施したその顔は老け薬の効果もあって普段よりもかなり大人びて見えた。
ワンピースから伸びた華奢な手足は白人と違って温かみのある肌の色をしている。
服のサイズが小さいのか、彼女の胸元ははち切れんばかりで、スカートの丈も短くて太ももが目に付く。
あのシリウス・ブラックの興味を引くのも無理はない気がした。