第6章 ハロウィンの夜に
「ふぅん…ますます気になるな」
そんな格好、男誘ってるようなもんだろ?とシリウスは甘く笑う。
キラが見た目通りの年齢であればその色気にクラりときてもおかしくないほど。
シリウスの腕がキラの腰に回され、ぐいと引き寄せられる。
「いや、離して――」
身をよじり、キラはその腕の中から逃げ出そうとする。
そのとき、廊下の先によく見知った人の姿を見つけた。
「せ、セブルス!セブルス!!」
キラは必死でその名前を呼んだ。
「セブルス、だと?」
シリウスの顔が歪むが、キラは構わず彼の名前を叫ぶ。
「助けて、セブルス…!」
――けて、セブルス…!
呼ばれた気がして、セブルスは足を止めた。
ハロウィンパーティの騒がしさに疲れて大広間を出てきたところだった。
きょろきょろと付近を見回すが、自分を呼ぶような者がいるような気はしなかった。
スリザリンの寮に戻ろうと歩を進めると、今度ははっきりと聞こえた。
「セブルス!」
その声はよく知った人物のもので。
しかし普段なら落ち着いた彼女の声が切羽詰っているように聞こえた。
「キラか?」
「セブルス、お願い、助けて…!」
小走りで声のする方へ近づいていく。
すると、男子生徒が覆いかぶさる誰かの猫耳が見えた。
セブルスはカッとなってその男子生徒の肩をつかみ、キラから物凄い勢いで引き剥がす。
キラはそのままセブルスの後ろに隠れる。
どこのどいつだ!とその男子生徒を見れば、自身が憎んで余りある男の一人、シリウス・ブラックだった。
セブルスは助けを求めていたキラに目もくれず、ただ目の前の男を鬼のような形相で睨んだ。
「――ブラック…!」
「…スニベルス。こんなときにお前の陰気くさい顔を見るなんて最低な気分だ。君はこんなヤツと知り合いなのか?付き合う相手を選ぶべきだと言いたいね。特にイカれたスリザリンのスニベリーなんてね」
シリウスの言葉にセブルスは目を吊り上げる。
「フン。そのスリザリンに汚らしい手で触れないでもらおうか」
「スリザリン、だと? なるほど…リリーに振られて傷心のスニベリーは他の女によしよししてもらってるわけだ」