第6章 ハロウィンの夜に
「……」
「……セブルス…?」
じっとキラを見つめたまま、何も言わないセブルスにキラは不安げに声をかけた。
「あー…一瞬誰だかわからなかった」
それだけ言ってセブルスはダモクレスに取られた本を奪い返す。
(感想それだけか…)
可愛いと言ってくれるかな、なんてちょっと期待した自分が馬鹿だった。
そもそもセブルスは仮装に興味がないのだ。
足元に小石があれば蹴っ飛ばしたいところである。
「キラ、そろそろ…」
「うん、それじゃ…私たち、そろそろ大広間へ行きますね」
「楽しめるといいねー。あ、これ追加の薬。あんま効き目長くないからさ。一時間くらいしたら飲んで」
「わかりました。ダモクレス、ありがとうございます」
「どういたしましてー」
手をヒラヒラと振ってキラたちを送り出した後、しばらくしてダモクレスもセブルスと共に夕食のために大広間へ向かった。
ハロウィンパーティということで、夕食はかぼちゃづくしであった。
かぼちゃグラタン、かぼちゃパイ、かぼちゃケーキ、かぼちゃタルト。
そしてかぼちゃジュースで乾杯。
キャンディやお菓子を生徒同士で交換するなどしてキラはパーティを楽しんだ。
というのも、誕生日プレゼントと一緒に、祖母から日本の飴、金太郎飴がたくさん送られてきていたのだ。
その物珍しさに、キラのところへ一年生が殺到し、あっという間に金太郎飴はなくなってしまった。
代わりに、大量の色彩豊かなキャンディでポーチはパンパンになった。
「あら、キラ…ヒゲが短くなってきてるわ」
「え? あれ、ホントだ」
触って確かめてみると、半分よりも短くなっているかもしれない。
みんなの前で薬を吹き出すわけにはいかないので、キラは大広間を出てトイレで猫ヒゲ生え薬を飲むことにした。
ここ最近、ようやくホグワーツ城の地図が頭の中で描けるようになってきた。
キラは最寄の女子トイレへ急いで入り、気合いを入れて一気に薬を飲み干した。
「うー…」
気持ち悪い。
そう思いながら、ハンカチを探してポケットに手を入れると、指先にコンパクトミラーが触れた。