第6章 ハロウィンの夜に
「ちゃんと薬、忘れずに飲んでねー」
にっこり笑うダモクレスに、キラははい、と頷いた。
「薬?」
「うん。猫ヒゲが生える薬渡したんだー」
それを聞いて、セブルスは眉をひそめる。
「大丈夫だよー、ちゃんと自分で試したから!」
「…ならいいが」
そんな二人の会話を聞いて、キラは少し不安になるが、ダモクレスが「あ」とキラの首元のチョーカーに気づき、薬の話が流れていく。
「可愛いねぇ。似合ってるよー」
「そうですか? ありがとうございます」
「うんうん。渡した猫の衣装とも合うんじゃないー?ねぇ、セブルス」
「…さぁ…」
どんな衣装を渡したのか知らないので答えようもない。
セブルスはチラ、とだけキラを見てまた本に視線を戻してしまった。
「つまんないのー。さ、着替えておいで」
「は、はい。それでは」
駆け足で自分の部屋へと向かう。
扉を開けて中に入ると、着替えを終えた二人がお互いの髪の毛をセットしているところであった。
「キラ、そこのヘアピン取ってもらってもいいかな…?」
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
「アニー、ちょっと引っ張りすぎよ、痛いわ」
「あ、ごめんね」
アニーは器用にもキャリーの髪を結い上げ、上品なポンパドールを作り上げている。
「うわぁ、すごい! アニーにこんな特技があったなんて!」
キラは感心してしまう。
「キラもやってあげるよ」
「え、わ、私はいいよ…猫耳カチューシャつけるだけだし」
「んー、でも…巻くくらい、いいんじゃないかな」
にこ、と可愛い笑顔で微笑まれるとなんだか断りづらくて、結局お願いすることとなった。
ダモクレスから渡された衣装に着替える。
パフスリーブのワンピースは、少し丈が長めで膝下まである上品なデザインだった。
ちょっと胸の部分がスカスカしているような気もするが仕方ない。
「あら、可愛いじゃない」
「髪の毛巻き巻きしようね」
アニーが楽しそうにキラの髪の毛をいじりだす。
「メイクもしちゃいましょ」
キャリーがそう言って自前のメイク道具を並べだす。
(あ、あれ…こんなはずでは…)