第6章 ハロウィンの夜に
アニーからバースデーカードを受け取って開くと、内容は至ってシンプルだった。
"Happy Birthday to you"
はて、この筆跡、どこかで見たことあるような…。
(誰だっけ…?)
記憶の中を探ろうとしたキラであったが、キャリーにプレゼントは何が欲しいかを尋ねられたため、それは途中で頓挫した。
朝食後は一旦部屋に戻り、ガラスペンとインクの他にもらったプレゼントを開けてみた。
祖母からのプレゼントはとても繊細な細工の施されたコンパクトミラーで、何とも女心をくすぐる可愛らしいものであった。
両親からはバラがモチーフのチョーカーで、少しゴシックな様相で、ホグワーツ城にマッチした大人っぽいデザイン。
(もう中学生だもん、大人っぽいのがいいよね)
祖母はもちろんだが、離れていても親は親か。
分かってくれているんだ、とキラは嬉しくなる。
早速チョーカーをつけてみる。
「キラ、とっても似合ってるわ! ね、アニー」
「うん。可愛いと思う…」
「ホント? ありがとう」
親友の二人にも褒められて、キラは上機嫌で授業に向かうのであった。
そして放課後。
仮装をする者は終業のベルが鳴るや否や、教室を飛び出していく。
寮に戻って準備をするのだ。
「キラ、アニー、早く!」
キャリーに急かされ、二人はいつもの二倍以上の速さで歩いた。
他の寮の生徒は駆け足で寮に戻っていくが、良家のお嬢様は走ったりせず、可能な限り早く、かつ優雅に歩くのだそうだ。
二人はメイクや髪型など準備がたくさんあるが、キラは着替えて薬を飲むだけなので急ぐ必要はないのだが。
スリザリン寮に着き、談話室を通り抜けて部屋への道へ差し掛かったときだった。
「キラ」
ダモクレスが声をかけてきた。
「あ…キャリー、先に行ってて」
「ええ、わかったわ。アニー行くわよ!」
「う、うん…」
二人を行かせて、キラはダモクレスの方を向いた。
見れば、すぐ隣の椅子にセブルスも座っていた。