第1章 9と3/4番線
ホグワーツ特急の中、キラは座れそうなコンパートメントを探して歩く。
(もっと早くに乗っておかなきゃダメだったかな)
どこも中々騒がしくて入れそうにない。
来た道をもう一度戻ろうとしたときだった。
「君、席を探してるの?」
見上げてみれば、くしゅくしゅとした栗色の髪の優しそうな男子生徒がこちらを見ていた。
「はい…。中々見つからなくて」
「じゃあ、僕らのところへおいで。妹と友達になってくれたら嬉しいな」
「はい!」
垂れ目気味の人のよさそうな柔らかい笑顔にほだされ、キラはひとつ返事で後をついて行く。
コンコンコンとノックをしてその男子生徒はコンパートメントの扉を開けた。
「グラエム。ちょうど今あなたを探しに行こうかと思っていたところだわ」
タイミングがいいわね、と肩ほどまでの金髪の女子生徒が立ち上がり、グラエム、と呼んだ男子生徒にハグをする。
と、すぐ後ろに控えていたキラに気づき「あら」という顔を見せた。
「こ、こんにちは…」
女子生徒はとても美人だった。
深いブルーの大きな瞳、すっと通った鼻筋に、ほのかに色づく頬。
人形みたいな出で立ちにキラはどぎまぎしてしまう。
「コンパートメントを探していたみたいだったから、声をかけたんだ。一年生のキラ・ブルーム…だよね?」
「え?」
男子生徒に名乗った覚えはない。
キラは驚いてパチパチと目を瞬かせた。
「僕はグラエム・カドワース。駅で、セシリー・ブルームさんと一緒にいたでしょう?絶対お孫さんだと思ったんだ」
意味がわからず、キラは困惑した。
「ねぇ、とりあえず私の隣に座って落ち着きましょう?」
ほら、と促されてキラは言われるまま腰を下ろし、隣を見ると先ほどの金髪の女子生徒をそのまま小さくしたような子が座っていた。
「私はキャロル。キャリーって呼んでくれるといいわ」
「あ、うん……」
戸惑いながら頷いて、キラはその隣に座った。
すると、グラエムはさっと身を屈めてキラの目線に合わせて話し出す。
「びっくりさせてごめんね。ちゃんと説明するよ。まず…君は、ホラス・スラグホーン教授を知ってるよね?」
キラはこくりと頷いた。