第5章 慕情
セブルスの魔法は、キラにとてつもない衝撃を与えた。
ホグワーツに来てから、いくつもの驚きを体験したが、彼の魔法は段違いだった。
まだ一年生のキラは、授業でも高度な魔法を見ることはほとんどない。
授業で最も驚き、興奮したのは変身術だった。
初授業のとき、教室には猫しかいなかった。
しかし、それがマクゴナガルだったときの衝撃。
それにも勝るとも劣らない、しかもそれが教授ではなく一生徒によってもたらされたのだ。
キラの口からは、「すごい」の言葉しか出てこない。
温室の中に戻ってきたセブルスはキラが放心しているのを見て満足げに口の端を引き上げた。
「いやー、さすがセブルス!やるねー」
ダモクレスの軽い口調も、今回ばかりは心地よく聞こえる。
「あんなの食らったらひとたまりもないなー。セブルス無敵だねー」
「…まだまだだ」
そうは言ったものの、悪い気はしない。
もっと、もっと強い呪文を手にしたい。
「セブルス…あの魔法って、私でも使えますか?」
突然のキラの発言にセブルスとダモクレスは目を見合わせた。
他の一年生よりは落ち着いた様子のキラに見えたが、やはり中身は幼いようだ。
安易に高度な魔法に飛びつくのはよろしくない。
セブルスに代わって、ダモクレスが応えた。
「んー、どうだろうねぇ。セブルスみたいにどの教科も優秀じゃないと難しいかもねぇ。俺は魔法薬学一辺倒だから、使えない魔法結構あるしー」
「そうなんですか?」
「そうだよー。しかも、今のは新しくセブルスが作った呪文だから。使いこなすのは難しいと思うよ」
「そうですか…」
見るからに肩を落とすキラ。
どうしてそんなに、とセブルスは気になった。
「なぜだ?」
「え?」
「お前に必要な呪文ではないように思うが」
「あー…」
どう言えば良いものだろうか。
キラは躊躇いながらも口にした。
「その、例えば…何か、バラバラにしたいものを箱に入れて…その箱の中のものだけに、呪文を当てる、みたいなこと、できたらいいな、って」
セブルスが眉根を寄せるので、キラは身振り手振り説明せざるを得なかった。