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【HP】月下美人

第5章 慕情


「俺とキラはここで見てるから、温室の外でやればいいじゃない?」
 枯れ木もちょうどあるし、俺もまだ見てないしー、とダモクレスは楽しそうにしている
 毎度毎度見せているわけではないのだが…。
 セブルスはハァ、とため息をついた。

 何も知らないキラは、どんな魔法ですか?と小首を傾げ尋ねてくる。
 いつものように、「すごい!」と歓声を上げてくれるだろうか。
 キラの顔を見ていると、そんな期待が胸の中に膨らんだ。

「……ここで見ていろ。近寄ると危ない」
「はい、ここで見てます!」

 温室の外に出て、セブルスは落ちていた太めの枯れ木を数本集め、杖を構える。
 この枯れ木は…アイツだ。あの男だ。
 切り刻んでやりたい。
 そう思って呪文を唱えた。

「セクタム・センプラ」

 閃光が走り、枯れ木は木っ端微塵に砕ける。
 四方八方に木っ端が飛んだ。
(ふむ。こんなものか)
 ここまで砕ければ、上出来だろう。
 セブルスは自らの呪文の出来に満足した。

 本来、これは対人間のもので。
 敵を八つ裂きにするという魔法であった。
 枯れ木が相手だと粉々になったが、実際人間が相手だと魔法が当たった者は全身を切り裂かれ、重傷を負うような呪文。
 物体を粉々にしたいのであれば、また別の魔法があるのだ。
 セブルスは、どんな敵でも蹴散らす強い力を持つ魔法使いになりたかった。
 そうすれば、根暗だと自分を馬鹿にする奴らも、混血だと蔑む奴らも、自分を認めざるを得なくなるだろう。
 そのためには死喰い人になって、その死喰い人の奴らでさえも凌駕するのだ。
 強い魔法使いになるには、このような闇の魔術がいくつも必要となる。
 これは強さを見せ付けるには最適の呪文だろう。
 許されざる呪文はたったの三つしかない。
 それ以上のものを、セブルスは生み出したいと考えていた。

 ガラス張りの温室の向こうに視線をやれば、エメラルドグリーンの瞳を大きく見開いてキラがこちらを見ていた。

 
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