第5章 慕情
日曜日のことだった。
ダモクレスとセブルス、二人でティータイムをしていると、キラがやってきた。
「一緒にお茶するー?」
「いいんですか? ありがとうございます」
ダモクレスの隣にすとんと腰を下ろしたキラに、セブルスは杖を一振りして紅茶を淹れてやった。
「わ! ありがとうございます」
にこにこと嬉しそうにカップを持つキラに、セブルスはなぜだか気分が上昇するのを感じた。
「バラ、ちょっとずつ大きくなってきたねー」
「はい。でも花が咲くのはまだまだ先ですけど」
「種からだもんね。バラ好きなんだねー」
「えぇ。バラが一番ポプリに向いてるんで」
「ポプリ?」
「はい。バラって花弁が大きいので、匂いが保ちやすいんです。色も綺麗ですし」
「そんなの作ってるの」
「クローゼットに入れると服が良い匂いになるんです」
「へぇ~。そうなんだ。いいね、女の子らしくて」
二人の会話を読書をしながらセブルスは聞いていた。
(そうか。たまに近寄ると良い匂いがしたのはポプリのせいか…)
同年代の女子がつけているような香水とは全く違う優しい香りだった。
普段ならそういうものを毛嫌いするセブルスだったが、それがキラならそれも有りだな、などと思う。
そんなことを考えていたら、話題が変わっていたらしい。
「ねぇセブルス」
ダモクレスがこちらを見ていることに気づいて、セブルスは顔を上げた。
「なんだ?」
「聞いてなかったのー?失礼なやつだなー」
「お前ほどではない」
「ひどいねー」
「あはは…」
キラに相槌を求めるダモクレスだったが、頷けるわけがない。
乾いた笑いを返すキラをセブルスは一瞥する。
「セブルス、こわーい」
「セブルス、怖いですー」
二人して何なのだ。
さらに怖い顔になったセブルスに、二人は焦って話し出す。
「いや、ほら、昨日お前が言ってた新しい呪文の話をしたらキラが見たいって!」
「そうです!ぜひ見せて下さい」
「何を言って……」
最近考え出した新しい呪文はなんだったかと一瞬考えた。
それは闇の魔術に分類されるだろうもので、多少取り扱いには注意しなくてはならないものだった。
「…危険だろう」
大体、披露するために作ったものではないのだ。