第4章 近づく距離
セブルスがダモクレスの論文の誤字脱字チェックを始めてからしばらくして。
キラが友人二人を伴ってやってきた。
「すみません、二人が見学したいと…構いませんか?」
「…別に楽しくもなんともないと思うがな」
「ありがとうございます」
キラに二人を紹介された。
一人は同学年のグラエム・カドワースの妹、もう一人は一つ下のイザドラ・ヘンリンソンの妹だった。
「あー!あの二人のー」
ダモクレスはへぇ、と感嘆の声を上げる。
同じ寮とはいえ、普段ほとんど喋ることはないのだが、スラグクラブに招待されているメンバーなので、そのパーティーでは何度か話したことがあった。
ちなみに、スラグクラブとはスラグホーン教授が開催するパーティーを指す。
親に著名人を持つ者、本人がとても優秀な者、将来が期待できる者などがスラグホーンからクラブへの招待状を貰うのである。
暖炉から少し離れたカウチを陣取り、四人はキラを取り囲む。
「それで。今は何の呪文を?」
「浮遊呪文です」
「…それは、一番最初に習う呪文だな」
もう入学してから三週間経っている。
浮遊呪文は出来るのが普通ではないのか。
セブルスがじっとキラを見ると、彼女の目が泳ぐ。
「キラ、魔法薬学とか薬草学は得意なんですけど、杖を使うのが苦手みたいなんです」
見かねたキャリーがセブルスに声をかけるが、彼はキャリーをちらりとも見ない。
「…とりあえず、やってみろ」
先ほどまでセブルスが使っていた羽ペンをキラの目の前に置いた。
キラは杖を振りつつ、何度も呪文を唱えたが、わずかに震えるだけで浮き上がりはしない。
ふむ、とセブルスは腕を組みつつ顎に手を添えて考え込んだ。