第4章 近づく距離
夕食を取りながら、セブルスはグリフィンドールのテーブルをこそっと盗み見る。
リリーはどこだろうか。
今日は合同の授業もなく、一度も姿を見ていない。
まだ来ていないのか。
セブルスはため息をついた。
徹底的に避けられていることはわかっていたが、見かけることさえできないのだろうか。
大広間の入り口をふと見ると、キラが友人たちと入ってくるのが見えた。
当然そのままスリザリンのテーブルに着くので、セブルスの視線から消えるはずであった。
だが、なんとなくキラを目で追う。
こっちを向いたりしないだろうか――。
「セーブルースくーーん」
「…なんだ」
ふと声を掛けられて振り向くと、ダモクレスであった。
視線を戻せば、もうそこにキラの姿はなかった。
どこか席に着いたのであろう。
セブルスはそう思って、もう一度ダモクレスに目線をやる。
「何見てたのー?」
「…別に」
「ふぅーん。あ、戻ったらさー、ちょっと付き合ってくれない?」
おねがーーい!とわざとらしい上目遣いにイラッとしない人間などいないだろう。
「どうせまた論文の校正だろ」
「わかっちゃったー?てへ!」
「誤字脱字くらい自分で添削しろ」
「むーりー!俺、魔法薬の調合に関しては天才だと思うけど、論文は苦手!スペル間違ったっていいじゃない別に!!」
「良いわけあるか」
「ねー手伝ってー」
「断る。今日は予定がある」
「嘘だーー」
「なぜ嘘をつく必要がある」
「校正やりたくないんでしょ!!」
「それはそうだ」
「セブルスがいじわるだー!」
「……」
「あ、ちょっと、無視しないでよー」
「…途中までならやってやる。談話室で、ミズキ…いや、キラが来るまでだ」
「キラ? なんで?」
「…魔法薬学と、呪文学を教えて欲しいと言っていた」
「セブルスに?」
「……あぁ」
「魔法薬学なら俺の方が得意なのになー。それ以外はセブルスのが上だけどさ」
「教えるのには向いてないと思われてるんだろ」
「それは否定できないな!」
研究者ってのはそういうもんだし~と笑うダモクレスを尻目に、セブルスはいつの間にか夕食を食べ終え、大広間を出て行こうとする。
ダモクレスは食後の紅茶を慌てて飲み干し、後を追った。