第4章 近づく距離
それらの本をキラの目の前にどん、と積んだ。
「えっと…?」
「記述内容が間違っていることもあるが、書物から得られる知識は無駄ではない」
「…全部読めってこと…で、すか?」
「……」
(嘘でしょ!本気?!)
キラの顔が引きつったのを見て、セブルスは口の端を歪ませた。
「そう言いたいところだが、そんなことをしていたら時間がいくらあっても足りない」
セブルスは本をパラパラとめくり、その間に付箋を挟んでいく。
「このページにお前が知りたいことが書かれている。それぞれを読み比べて、お前なりに考えてまとめてみろ」
「はい…」
それでも時間すごくかかるんじゃないの?!とキラは思ったが、セブルスはすぐに自分の作業に戻ってしまった。
(英語を読むの、あなたと違って時間かかるんですからね!)
心の中で毒づきながら、キラは本を開いた。
(――うーん…どっちが正しいんだろう…)
セブルスが言っていたように、こっちの本とあっちの本でかみ合わない。
それらを全て知った上で、何が一番最良なのか、を自分で選び取る力が魔法薬学には必要だと言うことはわかるが、今は答えが知りたかった。
しかし、簡単に聞けそうにもない。
キラは頭を掻き毟りたくなった。
本とにらめっこするキラの様子をセブルスはこっそり伺っていた。
何もかも、手取り足取り教えなくてはならないようなら、二度目はないと思ったのだ。
しかしキラは本を読みながら答えを見つけ出そうと努力していたし、簡単にセブルスに助けを求めたりしなかった。
夕食の時間も迫ってきていたので、もうそろそろ良いか、と立ち上がる。
しかし集中しているキラは気づかない。
セブルスは、詰まれた本の中の一冊を手に取り、キラが読んでいる本の上に広げた。
「っうゎ!」
「これが正解だ。先に夕食へ行く。夕食後は談話室で待て」
「え?え?」
びっくりして体を揺らすキラを無視して、言いたいことだけ言ってセブルスは図書室を後にした。
足早に大広間へ向かいながら、一年生の呪文学とはどんなものだったかを思い出そうとする。
キラがどこでつまづいているのか、それを聞き忘れていた。
まさか一番初めからだとは思いもしなかった。