第4章 近づく距離
キラは上機嫌でその日の授業を受けた。
早速今日、セブルスの夕食前の時間をもらって勉強を見てもらうことになったからだ。
最後の授業が終わり、キラは鼻歌を歌いながら教室を出た。
「どうしたの、キラ。とっても楽しそうね」
「うん、ちょっと図書室で待ち合わせてて」
「待ち合わせ…?」
キャリーはまさか男の子と?と口元を手で押さえる。
アニーも目を丸くしてキラを見た。
「男の人だけど…そういうのじゃないって。ほら、温室で会った上級生の話、したでしょ」
勉強を見てもらうの、とキラが顔をほころばせる。
「そうなの?残念。じゃあまた夕食のときに」
「じゃあね、キラ」
手を振って図書室へ向かうキラを見送った後、二人は顔を見合わせた。
「あれって、そういうのじゃない、って感じじゃないわよねぇ?」
「うん…」
「年上って、誰でも一度は憧れるものだわ」
ふふふ、と二人は笑いあいながらスリザリンの寮へと向かった。
初めて踏み入れる図書室。
恐々その扉を開けてみる。
入ってすぐのところに、図書館司書のマダム・ピンスが座っていた。
「ごきげんよう、マダム」
とりあえず小さく挨拶をして、セブルスが指定した一番奥の勉強机を探す。
書棚と書棚の間にぽつりとその机は現れた。
(あ…もう居る)
大きな、それでいてひょろりとした体躯を折り曲げ、机にこれでもかと顔をくっつけて何か羊皮紙に書き込んでいる。
キラは邪魔をしないようにそっと回り込み、向かいの席に腰を下ろした。
魔法薬学の教科書と先日どうしても分からなかった魔法薬のレシピを書き込んだ羊皮紙を広げる。
羽ペンを取り出したところで、セブルスが顔を上げた。
「……何を聞きたい」
勉強会は何の前触れもなく始まった。
「あ、はい…」
キラは先日銀の匙を溶かしてしまった授業の内容を伝えた。
すると、セブルスは無言で立ち上がりどこかへ行ってしまった。
(え…?)
どういうことかと狼狽するキラだったが、すぐに彼は戻ってきた。
数冊の本を手にして。