第26章 第二部 謀策
初めてクィディッチというものを見たのは、一年生のとき。
その試合があると周囲が色めき立った頃に「クィデ…?何それ?」と言って級友達にピッチまで連れて来られ、その練習を見せられたときだけなのだ。
そしてその余りの激しさにクィディッチというスポーツはとにかく怖いと思い避けてきた。
そういえば、あのときなんでここに柱があるんだろう?と疑問に思ったような…思っていないような…いや、ブラッジャーの勢いに目を背けるので必死だった気がする。
「ピース…あれ、登るの?」
「うん、そうだよ」
(しれっと言うけど! 高すぎでしょ?!)
「う、ウワァァ、タカイナァァ」
高い。怖い。
ギシギシ鳴る。怖い。
木製の高い高い観客席は相当なスリルである。
そんなつもりはなかったのにピースの腕に捕まっていないと立てない。
(さてはこれが目的か…!!)
満足げな笑みを浮かべるピースをジト目で見る。
「さ、もう少し上の席に行こうか」
「うぅぅぅ」
どうして皆こんなところでさくさく動けるのか。
最前列には人がぎゅうぎゅうでこの塔のバランスはそれで保てるのか疑念を抱いてしまう。
そんなときだった。
雲間から日の光が差し込んで、クィディッチのピッチが照らし出された。
「ちょっと!見て!」
「何だあれ?」
「”ギルデロイ・ロックハート”だってさ」
「またアイツか。何を考えているんだか…レイブンクローは随分とお粗末な生徒を抱えているんだな」
観客席についている生徒達がざわざわと騒ぎ出す。
キラとピースは首を傾げながら観客席へ登り、皆の指さす方を見てみれば。
『ギルデロイ・ロックハート参上☆』
クィディッチのピッチ場にデカデカと魔法で描いた文字がきらめいていた。
「「わーぉ…」」
二人同時に呆れた声が出た。
罰則を受けるのは彼だ。
キラとピースは顔を見合わせて――大きなため息をついた。
「あいつか…」
「よりによってあの男だなんて」
クソだな、と呟いたピースにキラはブフッと噴き出した。