• テキストサイズ

【HP】月下美人

第26章 第二部 謀策


 クィディッチの試合当日、寮の部屋で手袋をはめマフラーを巻いてきっちり防寒対策をしたつもりのキラにキャリーが声をかけた。
「クィディッチを見に行くなんてどういう風の吹き回し?」
「ピースと行くんでしょう…?」
「うん、まぁ…その、お礼というかなんというかね。ねぇ、これで寒くないかなぁ?」
「ふぅん…。あぁ、コートの下にカーディガンは着た方が良いわよ」
「えっ、そんなに寒いの?」
「上の方は風が強いから…」
「上? 上ってどういうこと?」
「観客席がかなり上にあるのよ。まぁ見ればすぐわかるから、とにかくカーディガンも着て!」
「わ、わかった…今日は二人は見に行かないの?」
「ええ。スリザリンを応援する気持ちはあるのだけど、グリフィンドールの生徒だらけなのは頂けないわ。いちいち突っかかってきて鬱陶しいったら」
 うんざりするわ、と吐き捨てるキャリーには共感しかない。
 例のあの人が居なくなってから、スリザリンはことあるごとにこき下ろされるようになった。
 どうにもスリザリンとは相容れないグリフィンドールとの諍いは前からあったけれど、ここ最近ではさらに頻繁になっている。
 スリザリン出身者に死喰い人が多いのは確かだが、グリフィンドールにだっていないわけではなかったのに。
 ましてや今日の試合はスリザリン対グリフィンドールで、どちらの寮も相手を目の敵にしている。
 ほとんどの寮生は当然応援のため、相手がグリフィンドールならなおのことクィディッチ観戦に行かねばならない…と言うくらいなのだが、キャリーもキラと同じくそんなにクィディッチが好きではない――というよりも高いところが得意ではないのである。
 キラはクィディッチの練習風景しか見たことがなかったので、観客席がどうなっているのか知らなかった。



「え…あれ登るの…?」
 天高くそびえ立つ木造の柱が観客席だなんて思いもせず。
 呆然として見上げてしまう。

/ 347ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp