第26章 第二部 謀策
「あー、私、日本にいたので」
ちょっとわからないな、と首を傾げるとピースはそういえばそうだったねとその話を切り上げた。
「目くらまし術ができたら、もう少し何とかなるかと思うのですけど」
「今からやっても習得はできないだろうね」
「ええ、なので…扉が開いたら、瓶の蓋を開けてぶちまける。以上ですね」
「以上?!」
「結局、誰かの後ろに隠れるくらいしか方法は無いんですよ」
「確かに、そう、だけど…」
絶句して頭を抱えたピースだったが、すぐに顔を上げて笑った。
「…君ってホント、肝が座ってるというかなんと言うか…そういうところも魅力だけど」
「あー…それは、ありがとうございます、と言うべきでしょうかね」
サラリと投下されるピースの想いにキラは申し訳無さげに微笑むしかない。
「そうそう。褒められたらお礼を言うことだよ。えーと?なんだっけ、謙遜は美徳のスタイルは日本でしか通じないからね」
「それ、キャリーに何度も言われました。『ねぇ、自分が嫌いなの? どうしてそんなにネガティブなのかしら。理解できないわ! 自分のことは自分が一番大好きで自分自身がどれだけ魅力的なのかわかってないと!』って」
「あー、いや、それはそれでポジティブ過ぎる気もするけどね」
「なので。お礼は言うようにしないとなって」
「そっか。うん、それがいいよ。それはそうと…明日のクィディッチ、観に行く予定はある?」
その質問の意図は、とキラはピースの顔色を伺う。
(う…これは、デートのお誘い…よね…)
クィディッチはあまり好きじゃない。
怪我人がよく出るのは仕方ないけれど、ちょっとスポーツでの怪我というレベルを超えている。
観てて痛々しいし、そんな気分になるくらいなら読書していたいのが本音だったりする。
「気分転換にどうかな? 普段見たりしないとは思うんだけど」
クィディッチ観戦デートするくらい、ピースに対価を払うべきだろう――キラは彼の誘いをそのように受け入れた。
結果としてそれは大正解であった。