第26章 第二部 謀策
そう言ってキラは服の上から薬に触れた。
「どうして止めないんだ…」
普通は止めるだろ、というピースの言葉に(いや、魔法界って普通じゃないこと多すぎだから)と内心ツッコミを入れたくなるキラである。
「むしろ推奨しているようでした」
「えぇ…何それ、そんなの裏しかないよね」
「そうですね。でもこれで安心できました。止めろとは言われませんでしたから、このまま決行します。なので退学になはならないでしょう」
にっこりと笑うキラに、ピースは覚悟を決めた。
上手くスネイプが寝てしまえばいいのだ。
「三日後の夕刻かぁ…何かあったかな」
二人してほんの少し考えを巡らせれば、すぐに思い当たる。
「水曜日の放課後といえば」
「罰則の日!ですね!」
「つまり、誰かが罰則を受けに行く際にタイミングがあるということだね」
「ええ。まぁ誰かは…わかりませんが」
今日は土曜日だ。
明日は授業もないし、罰則を受けるような事態にはならないはずだ。
となると、月・火・水のどこかの授業で誰かがスネイプの逆鱗に触れるのだろう。
なので、それが誰だか考えたところでわからないものはどうしようもない。
「グリフィンドールかな」
「その可能性は高いですね。ハッフルパフということもあるかも」
「いずれにせよ、罰則を受けに行く生徒をどこかで隠れて待ち伏せしなくちゃいけないか」
「そうですね。グリフィンドール生だと私たちを警戒するでしょうけど…。その生徒の後ろから、瓶を投げ入れることができれば」
「中々ハードル高いね」
「透明人間になれたらいいんですけど」
「あー、死の秘宝だね。透明マントがあれば本当に便利だろうけど」
さも知っていて当たり前、のような口調のピースにキラは首を傾げた。
「死の秘宝、ですか?」
「あれ?覚えてない?小さい頃読まなかったのかな。三兄弟の物語ってやつ」
魔法界での鉄板のおとぎ話――実際にはおとぎ話ではないのだけれど――なのであれば当然キラは知らない。