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【HP】月下美人

第26章 第二部 謀策


 身を持って体験しましたから、などとキラが言うものだからピースは引き攣ったような笑顔でフリーズした。
(え…どういうこと?)
「ま、それは置いといて。ピースには、この薬の中身を準備室へぶちまけるか、もしくは揮発した気体が準備室から外に流れ出ないように風の呪文を唱えて欲しいんです」
「え、ええっと…」
「元々は、この薬のこととかも言わないで単純に風の呪文だけお願いしようと思ってたんです。もしバレたら停学か退学…くらいのことだなって」
「たっ…いや、うん、そうだよね…」
 なんせ教師を眠らせて準備室を占拠し、勝手に生徒のレポート採点をしようというのだから。
「だから、全部ピースに話してしまったら共犯になってしまうでしょう? なので…例えば、私が『暑いから風を送って欲しい』って頼んだことにすれば、ピースも私の計画に騙されて加担してしまった…となるだろうと。でも」
「でも……?」
「予想外のことが起きたんです」
「予想外?」
「先ほど、ダンブルドア校長にお会いしたんですが…バレてました」
「は、ええ?! バレてた?! それはダメだよ!」
 あっけらかんと言うキラにピースは両手で頭を抱える。
 どうしてバレているのにそんなに落ち着いているのか、とキラを見るも、彼女はいつもと変わりない様子で淡々としている。
「それで、中止し「しません」…ない、の…」
 中止はしないという回答が被さって、ピースの体から力が抜ける。
 これはもうやる気満々だということが伝わってきていた。
「中止なんてしませんよ。何故か決行に適したタイミングを教えて下さいましたので、決行します」
「……ん? どういうこと?」
 理解が追い付かないピースはぽかんとした顔でキラを見る。
 キラは私にもわかりません、と肩をすくめた。
「三日後の夕刻、機を逃すな――と言われたんですよ。薬をどこに隠し持ってるのかもご存知のようでした」



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