第26章 第二部 謀策
「――ということで、ご協力いただきたいのです」
「は、はぁ…なるほど…?」
にっこりと笑ったキラの顔は中々に晴れ晴れとしていて…それがちょっと怖かった。
確かに、採点待ちレポートが準備室から溢れ教室の端にどんどん積みあがっていく様は憂慮すべきことで、次期薬学教授の座を狙っているキラが片付けるというのは良いアイデアに思われる。
キラの魔法薬作成の研究を進めるためにスネイプに実験計画書を提出しているのだが、当然それにも目を通せていない。
それが一番困るのだというキラの訴えは当然のことであった。
魔法薬のスペシャリストになるには本を読むだけでは駄目なのだから。
それなりの実力を有してはいるはずだと多少なりとも自信があったキラは、手伝いをにべもなく断られたことに怒っていた。
皆迷惑しているのに、どうしてそれがわからないのか。
だから、あの準備室を占拠してやろうと思ったのだ。
手も足も出ないような状態にして、準備室を片付ける。
課題はもちろん、掃除も必要になるだろう。
これを機に自分の使いやすいように配置換えしてやろうとキラは目論んでいた。
(そう、だっていずれは私が使う場所なんだから。これはそのときの予行演習よ)
ダンブルドアの後押しもあって、キラはもうやる気に満ち満ちていた。
「それで、どうして眠り薬を…」
「あの人、全然眠れてないんですよ。元々不眠気味でしたけど。だから、ついでに寝かしちゃえばいいやって」
「そ、そうなんだ」
「はい。でも魔法だと、ほぼ100%防がれてしまいます。こちらが魔法を放つより早く返り討ちに合うでしょう。それで、この薬の出番です」
ちらり、と懐から薬を見せてすぐにしまい込む。
その一瞬見えた薬は液体で、ピースはそれをどうやって飲ませるのかと首を傾げた。
「これは飲み薬じゃないんです。とても揮発性の高いもので、気化したものを吸えばあっという間にぐっすりです」