第26章 第二部 謀策
ホグズミードから帰ってきてすぐ、キラはスリザリンの談話室に戻ってピースの姿を探した。
彼は友人達と一緒にソファに座っていたのだが、話の真っ最中のようで手を振るのは躊躇われた。
(まぁ、後でも構わないか)
そう思って上げかけた手を下ろしかけると、ピースがおもむろにこちらに視線を動かしてキラを認識する。
その途端、にこりと微笑まれてしまったものだからキラは手を振らざるを得なくなった。
そうすると、彼の友人達はしたり顔で彼の肩を小突いてから離れて行く。
キラとピースが本当に付き合っていると思っているに違いないそのやり取りに、キラは小さくため息をつきつつ彼の隣に腰掛けた。
「キラ。その…どうだった?」
革張りのソファがぎしりと音を立て、ピースとの距離が近くなる。
「そうですね…進路相談は上々、とでも言いましょうか。ピースに手伝っていただきたいこと、お話ししても?」
「え? あ、うん」
ピースが頷いたのを確認したキラは、そっと杖を取り出して耳塞ぎの呪文を唱えた。
「今日、ダモクレスに会ったのはただ話をしに行ったわけではなくて。睡眠薬をもらいに行ったんです。スネイプ教授を眠らせるために」
「は…え?」
「この薬は学生時代にダモクレスが開発したもので、非常に揮発性が高くて」
懐から取り出した薬の瓶を見せて説明しようとしたキラにピースは両手を振って制止する。
「あー、ちょっと待って待って!! いや、何それ? どういうこと?!」
「ピースにはスネイプ教授に声をかけて部屋のドアを開けてもらいたいと思っていて。私では何を言っても開けてくれないんですよ。だから」
「じゃなくてね!」
「えっと…ではどこから話しましょうか」
「そうだね…あー、んー、まず…キラはどうしてスネイプ教授を眠らせたいのかな?」
顔を引きつらせつつもピースはまず初めに動機を確認することにしたのであった。