第26章 第二部 謀策
ピースに相談していいものか、否か。
そんなことを考えながらホグワーツ城に戻ってきたキラは、思いも寄らない人物から声を掛けられた。
音も無く目の前に現れたのは長い顎髭を蓄え、また長いローブを引きずる滅多にお目にかかれないその人。
「ご機嫌いかがかな、Ms.ミズキ」
「ダンブルドア校長…?」
まさか話しかけられるとは思わず、キラは驚きを隠せない。
「こうやって話すのは…ふむ、初めてじゃったかの」
半月型の眼鏡の奥のブルーの瞳がキラをじっと見つめてくる。
値踏みされているような視線に、もしかしてこの薬や計画のことがバレているのかもしれない、と冷や汗が出る。
「あ、あ、あの…」
「うむ。問題ない」
「へ…?」
「そうじゃの……三日後の夕刻…それが良かろう。機を逃すでないぞ」
「えっ」
トントン、と薬を隠している辺りを指でノックされてキラは目を見開いた。
(や、やっぱりバレてる…?! なんで?!)
口をパクパクさせているキラににっこり笑って、ダンブルドアは歩いていってしまった。
どうしてわかったのか。
何故咎めないのか。
そして。
「三日後の、夕刻…?」
実行するタイミングのこととしか思えない。
意味がわからない。
教師を睡眠薬で眠らせるという、悪質なイタズラを推奨する校長がどこにいるだろうか。
とりあえず、わかったことは一つだけ。
(………退学には、ならないってことかな…)
理由はわからないが止めなかったのだから、実行したとして退学にはしないだろう。
問題ない、と彼は言ったのだ。
(これでピースに話しやすくなった、かな)
キラはよし、と小さく拳を握りしめる。
三日後の夕刻に向けて、キラは迷わず突き進むことにした。