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【HP】月下美人

第26章 第二部 謀策


「ああ、あの人。でも、どうして?」
「まぁ…進路相談、とでも言いましょうか」
「進路相談?」
 用件は複数あるが、表立って言えるものはない。
 間違ってはいないけれど、正確とは言えないな…と思いながらキラは答えた。
「そうです。私、ディリスに行きたいな、と思っていて」
「ディリスって…聖ディリス魔法疾患傷害病院、だよね」
「はい」
 こくりと頷いたキラにピースは目を丸くして驚いた。
 それはそうだろう。
 キラはブルームを継ぐのだと誰もが思っているのだから。
 最初にキャリーとアニーに話したときも随分と驚かれたものだった。
 そのときのことを思い出してキラはくすりと笑みを零す。
「ブルームの家は…?」
「いずれは、継ぎますよ。でも、まずは自分の道を自分で選びたいんです」
 真っすぐピースを見つめ返せば、彼はハッと我に返ってから微笑んでくれた。
「そうなんだ。キラはすごいね。自立したとても素敵な女性だと思うよ」
 ピースの過剰とも言える誉め言葉にキラは苦笑しながら、さらに衝撃的な発言をした。

「魔法薬学の教授になりたいんです」

 ピースの口がパカッと開いた。
「は…え?」
「私、魔法薬学教授の席、狙ってるんです」
 だから、ホグワーツを卒業した後も勉強しなくてはならない。
 セブルス・スネイプという人間から教授の座を奪おうというのだから、生半可なことではいけないのだ。
 ディリスなら様々な知識、経験が得られるはずだし、脱狼薬の研究開発に携わっているということが公にできるようになれば、教授の座を射止めるには有力な肩書となる。
「ディリスでもっと学んで。それから、スネイプ教授には退いて頂きたいな、と」
「わぉ。それは、なんというか、本当に、びっくりだな。でも、そうか…だからMr.ベルビィに相談するのか」
「ええ、だから――」
 そこまで言って、フッと頭に悪い企みが浮かんだ。
 いや、すでに考えていた企みに、この目の前にいる彼を巻き込んでしまえばいいのでは?と思ってしまったのだ。



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