第26章 第二部 謀策
案の定、キラはピースにデートに誘われた。
温室でスネイプの後ろ姿を見たその日の夕食の場であった。
以前まではキャリーとアニー、キラの三人で座っていたのだがピースから告白を受けてからは、度々ピースがキラの隣に座るようになっていた。
このときもピースは「隣、座るよ」と言ってキラの返事も待たずに席に着いた。
「ごめんなさい、今回は人と会う約束をしているので」
「ホグズミードで? それは、男?」
わざわざ学校外で会う約束をするとなると、大抵はデートであることが多いのでピースは真剣な表情で聞いてくる。
「まさかあのレイブンクローの――」
「まさか! それだけは絶対にあり得ません!」
キラは思わず食い気味に答えた。
「あれは絶対にない。無理。思い出したくもないです」
ここしばらくあの顔を見ていないという幸福がかき消されそうな気がしてキラは頭を抱える。
「あー、うん、その、ごめん」
ものすごく嫌なのだということが伝わったようで、ピースは謝ってくれた。
「いえ……こちらこそすみません。取り乱しました」
大きなため息をついてから、キラは続けて言う。
「男の人には変わりないですけどね。ピースも知っているはずですよ」
「僕も知っている人?」
「ええ」
「…卒業生かな」
「そうですね」
キラの言葉にピースは考えを巡らせるように、顎をさすりながらヘーゼル色の瞳を左右へ動かした。
「…スネイプ教授しか思いつかないなぁ」
「わざわざホグズミードで会いませんよ」
「そうだよねぇ」
ピースはじぃっとキラを見つめる。
自分の好きな女の子が男と会うと聞けば、気になるのは当然のこと。
「……」
そっと、キラの手に彼の手が重ねられる。
「………」
キラはその視線と手のひらの温もりに耐えかねてため息をついた。
「そういう相手じゃないです。ダモクレス・ベルビィ、ご存知ですよね」