第24章 第二部 慟哭
(ピースのことより研究とスネイプのことばかり。どう考えても勝ち目はないのよね。ピースだって本当はわかってるくせに)
それでも、卒業までに何とかキラの心に爪痕を残したいのだろう。
時折キラの前に現れる、頭のイカれたレイブンクロー生のインパクトが強すぎるというのもあるかもしれない。
(そういえば最近見ないわね。やっとキラのこと諦めたのかしら)
キャリーがそう思ってから数日後。
彼は全校生徒を巻き込んでとある事件を起こすのだが、それは未だ誰も知る由もない。
ダモクレスに手紙を出した翌日の朝。
すっきりと目覚めたはずのキラであったが、現在ベッドの上であぐらをかいて悩んでいた。
(昨日はすごく良いアイデアだと思ったけど…本当にそれがあの人のためになるの?)
余計なお世話だということは重々承知している。
(でも、このままで良いわけない…よね)
ハロウィンのあの事件からちょうど1ヶ月が過ぎていた。
その間、彼はちゃんと睡眠を取れているのか?という疑問であれば絶対に否、だと思う。
それは一体どうしてなのか。
日刊預言者新聞が報じるところによれば、セブルス・スネイプはアルバス・ダンブルドアの命によりスパイとして闇の陣営へ潜り込んでいたという。
けれど多くの人はそれに疑念を抱いているだろう。
彼を直に見て知っている人であれば必ずだ。
そう思うほど、彼には闇の陣営が似合う。
それなのに『こちら側』に寝返った人物として罪には問われず、ホグワーツの教師として在籍し続けている。
つまり、何ら悩むことなどないのだ。
アズカバンへ送られるわけでもない。
職を失って明日を憂える必要もない。
だから、彼が何故あれほどまでに憔悴しているのか――それがわからなかった。
無理やりにでもあの研究室の中に入ってやろう!!
そう思っていた昨日の夜の勢いは、朝の冷静な頭によってすっかりしょげてしまった。
「とりあえず…水やりに行こうかな」
はぁ、と息を吐いて気持ちを切り替えるようにベッドから勢いをつけて飛び降りる。