第24章 第二部 慟哭
研究することが彼は好きだったはずなのだ。
もしかしたら、或いは…一石二鳥かもしれない。
「ありがとう、キャリー」
「え?」
「良いことを思いついたの」
「あら、そう。それは良かったわ」
「ふふふ」
楽しそうに笑うキラに、キャリーは内心で(ご愁傷様)とスネイプに同情した。
監督生になった去年辺りから、キラが随分スリザリンらしくなってきているとキャリーは感じていたのだ。
「そうと決まれば、準備をしないと」
進まなかったガラスペンが流暢に動き出す。
サラサラと書かれた文章を目にして、キャリーが「あら」と声を上げた。
そこには、次のホグズミードの日にダモクレスに会いたいが都合はどうか、と問う文言があったのだ。
「ピースと一緒にホグズミードに行くんじゃなかったの?」
「あー……約束は、してないよ」
「彼、きっと楽しみにしてるわよ?」
「別に付き合ってるわけじゃないんだけど…」
「あれで?」
「…あれで」
キャリーが胡散臭いものを見るような視線を向けてくるので、キラは苦笑いするしかない。
ピースのことは、嫌いかと言われたら嫌いではない――しかし好きかと問われたら、即座に好きだとは答えられない。
「好きじゃないわけではないの」
「煮え切らないわね」
「…わからないんだもの。わからないから、思わせぶりなのは悪いし、と思って断わるつもりだったんだけど」
「わからないなら、返事はまだいらないって?」
「……うん」
「――はっきり自分の気持ちがわかるまではこのままってことね」
「そう。……傍から見れば、私って酷いよね」
「そんなことないわよ。だってどう考えても……」
んんん、と唇を引き結ぶキャリーにキラは首を傾げる。
「どう考えても?」
「なんでもないわ。それより手紙を出すなら早くしないと。今日は見回り当番じゃなかったでしょう?」
キャリーの言葉にハッとしてキラは手紙を完成させ、梟小屋へと小走りで向かって行った。
その背中をキャリーは腕組みしながら見送る。