第22章 第二部 祝杯
「どこが駄目なの…?」
「駄目ってわけじゃなくて」
うーん…何て言えばいいんだろう、とキラは言葉を選びながら口にする。
「そういう風にピースを意識したことがないから…その…好き、とはまだ思えないし。嫌いじゃないからって付き合います!とは言えないもん」
「キラったら、堅いのね。私だったらとりあえずOKしちゃうのに」
「もしかして…」
アニーが言いづらそうに視線を左右に揺らす。
「まだ、あの人…Mr.スネイプのこと…」
「え?」
「なんですって?!」
キラはきょとんとした顔でアニーを見つめ返し、キャリーは目を釣り上げた。
「そうなの?!」
「まさか。もう3年も前のことだよ」
確かに彼のことは好きだった。
けれど、好きだったのは当時のセブルス・スネイプであって今のスネイプ教授ではない。
彼はもうキラの好きだった人とは違うのだ。
「そう、ならいいわ。生徒と教師だなんて、かなりのスキャンダルだもの」
それに昔よりさらに人相が悪くなってるわ、と肩をすくめてキャリーが言う。
「ま、確かに人相は前から悪いけど」
蒸したとうもろこしにかぶりつきながら、キラは眉間にくっきりとした皺を刻んだ顔を思い浮かべて笑った。
夕食は、ハロウィンパーティーゆえ今年もかぼちゃ尽くしである。
「はぁ…毎年同じだと流石に飽きるわ」
「そうかな…? あたしは好き…」
「嫌いじゃないけどね。でも誕生日だし、かぼちゃパイよりバースデーケーキが欲しいかなぁ」
パイをフォークでつつきながらキラがボヤいていると、目の前に手のひらサイズのケーキが現れた。
「わ?!」
「Happy Birthday to you.」
一本だけ刺さっていたロウソクにパッと火が灯る。
突然のことにビックリしてキラは声の主に視線を向けた。
「ピース…あ、ありがとうございます」
「これで君の心が動くなら易いものだけど」
しれっとそう言ったピースにキャリーが目を輝かせる。
「まぁ、素敵!」
アニーもこくこくと頷いており、結局その夜は二人してさっさとピースとつき合え!とこんこんと諭された。