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【HP】月下美人

第22章 第二部 祝杯


 そうして引かれるままに、キラはピースと連れ立ってキャリー達の待つ大広間へと歩き出した。
 二人が並んで歩くことは珍しくない。
 監督生としてよく一緒にいるので違和感はなかった。
 周囲の目もいつもと変わりない。
 けれど、ローブから出た二人の手は繋がっていて。
 その温もりをキラは意識せざるを得ない。
 お付き合いを決めたわけでもないのにこの状態で果たしていいのか?
 キラの頭は大混乱だ。
 気づけば食堂と化した大広間に到着し、「それじゃ、またね」とピースはにこりと笑って行ってしまった。
 颯爽とした後ろ姿を呆然と見送る。
 強引といえば強引だが、引き際もあっさりとしていて。
(あ…! 私、お礼言ってない!)
 驚きの連続で、誕生日プレゼントのお礼を言いそびれてしまったことにキラは今頃気付いた。

「キラ! こっちよ」
「お仕事お疲れ様…」
「あ、うん、ありがと…」
 キャリーの手招きとアニーからの労いにキラは何とも言えない顔で応える。
「どうしたの? そんな顔して」
「キラ、それ…」
「へ?!」
 アニーが指差したのは首元で、キラは思わずネックレスを手で隠してしまった。
 何かあったとしか思えないその動作をキャリーが見逃す筈もなく。
 キラは事の次第を報告することになってしまった。


「――ようやくピースが動いたのね」
「え?」
「あなたは気付いてなかったけど、ピースは随分前からあなたのことを想っていたのよ」
 分かりやすく好意を寄せてたんだけど、とキャリーが笑う。
「う、嘘だぁ」
 そんなまさかと笑ってみればアニーが残念な子を見るような視線を送ってきた。
「キラ…鈍すぎると思うわ…」
「ええ…アニーまでそんなこと言うの?」
「それで? 付き合うことになったのね?」
「あ、いや…とりあえず、保留というか…なんというか」
「保留ですって?!」
 ピース・マローンは確かに純血の血統としては浅いけれども、親は魔法省のエリート官僚でスリザリンの監督生を三年連続務める優等生だ。
 飛び切りのハンサムではないが、それなりに人気のある男子生徒と言える。

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